緩和ケアとホスピス

ホスピスとは

ホスピスとは主に末期がんやAIDSなどの疾患により、治癒困難な方がターミナルケア(終末期ケア)を行う施設のことです。
ホスピスは「ホスペス(hospitium)」というラテン語が語源とされていますが、起源を示す歴史的な資料はなく、中世ヨーロッパに建てられた救護施設が発祥ではないかと考えられています。
ローマへ巡礼に訪れる者や遭難した者などがこの施設に宿泊し、病やケガで旅立つことができない者をそのまま宿に滞在させて看病していたことから、救護施設とされていた小さな教会のことを「ホスピス」と呼ぶようになりました。その後時を経て、シシリー・ソンダースというイギリスの女医がホスピスの普及活動に尽力し、この活動をきっかけに世界中で死と直面していた多くの患者たちが救われ始めたのです。
日本で最初のホスピスケアが提供されたのは大阪の淀川キリスト病院であると言われています。
1973年より実質的なケアが行われ、1981年に日本で初めての独立型ホスピスが誕生しました。
1990年に医療制度にホスピス・緩和ケアが導入されて以降、全国各地に専門病棟が設立されて本格的に普及し始めましたが、まだまだ日本のホスピス・緩和ケアは発展途中です。

ホスピスは大きく分けると、以下の5つに大別されます。

  • 病院内病棟型・・・病院の一部の病棟をホスピスとして利用
  • 病院内独立型・・・病院と同敷地にありながらも、建物が別
  • 完全独立型・・・ターミナルケアを行う施設(緩和医療以外の治療は基本的に行われない)
  • 病院内緩和ケアチーム・・・病院内に緩和ケアを行うチームが存在
  • 在宅ホスピス・・・在宅におけるターミナルケア

ホスピス・緩和ケア病棟では、QOL(クオリティ オブ ライフ)による生活の質を高める取り組みが求められてきましたが、近年QOD(クオリティ オブ デス)という死の質を表した考え方にも注目が集まっています。
どのように死を迎えるのか、といった終末期の患者の気持ちと向き合うために、QODを重視する人も増えてきているのです。とはいえ、どちらの質に重きを置くかは個人によって異なるでしょう。
そのため、個々が最期まで尊厳ある生き方を全うするために、ホスピス・緩和ケアへのより広い理解と充実が求められています。

緩和ケアとホスピス

緩和ケアとホスピスケアの違い

ホスピスがターミナルケアを実践するところであることは分かりましたが、患者の苦痛を取り除くための「緩和ケア」と「ホスピスケア」には何か違いがあるのでしょうか?
結論から言うと・・・
緩和ケアとホスピスケアはどちらも「患者の苦痛を和らげること」という目的に違いはありません。
両者の異なる点は、緩和ケアは早期のがん患者などが対象であるのに対し、ホスピスケアの対象となるのは治療が望めない終末期を迎えた患者であることです。このような違いはあるものの、実際にはホスピスでも苦しみを和らげるための緩和ケアが行われています。また、緩和ケア病棟にも余命わずかの患者が入院している場合もあり、日本での両者の定義は少し曖昧になっているのが現状です。
一方、アメリカでのホスピスケアの定義は「6カ月以内に余命宣告を受けた病人」とされており、どんな病気であってもケアの対象とされています。
アメリカではホスピスケアの費用負担がないため、緩和ケアよりも普及率が高めであることが日本とアメリカとの違いと言えるでしょう。また、カナダでは緩和ケア、イギリスではホスピスケアと表現されるなど、国によって浸透している言い方の違いも挙げられます。
日本での緩和ケアも病気の進行度や疾患、余命に関係なく受けることができますが、終末期のがん治療というイメージが強く、ホスピス・緩和ケア病棟で終末期までお世話になるところと認識している人も多いでしょう。

しかし近年では、症状が緩和された場合には自宅療養へと移行する人も増えてきています。
最期の時を自宅でゆっくり過ごしたいという患者も多く、病状に合わせた在宅緩和ケア(在宅ホスピス)による対応を行っている施設もあるようです。
また、厚生労働省では緩和ケアチームの整備に乗り出し、患者だけでなく、その家族のケアにも重きを置いている緩和ケアの取り組みに注力しています。
病気の発見から終末期までにかかる医療費の負担は、75歳以上の後期高齢者で現役並みの所得がなければ窓口負担額は1割です。
所得があれば3割の負担が生じ、さらに入院や手術が必要になれば負担額は数十万円と一気に高額になってしまうでしょう。
医療費の負担が厳しい場合には、高額医療補助制度を活用して自己負担額を抑えることができます。
制度を利用すると、所得水準によって定めされた上限額を支払うことで、それ以上の医療費を負担する必要はありません。
しかし、入院中の個室代や寝具代といった費用が別途かかることもあるため、緩和ケア病棟へ入る際には保険適用外の費用もしっかりと準備しておくことが大切です。

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